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Designer 成瀬始子 Vol.1 心を強く揺さぶるもの

 
成瀬始子
Motoko Naruse
 

1947年東京生まれ。70年女子美術大学産業デザイン科卒業、石岡瑛子デザイン室入所。 1980年成瀬始子デザイン室設立。 ビジュアル・アイデンティティ、エディトリアル、広告、プロダクトなど領域を問わず活動。 デザイン・プロセスからインダストリーまで、手の力を介在させることを信条とする。 1993年求龍堂刊「ヴィオネ」原口理恵基金ミモザ賞受賞。 1994年PARCO出版刊「スキャパレッリ」ADC賞受賞。 2003年女子美術大学デザイン学科非常勤講師。2004年退職。

デザインは時代と共に、街に在る

デザインは時代と共に、街に在る

小麦色の肌。白い水着。力強い眼差し。資生堂のキャンペーン・ポスターを成瀬がデパートの化粧品売場で見たのは1966年。美大1年生の夏だった。モデル・女優の前田美波里のデビュー作となるそのポスターは、今まで見てきたものとまったく違っていた。成瀬は東京の渋谷で生まれ、百貨店を遊び場として時代の先を行く写真やデザインを見て育ってきたが、そのデザインは彼女の心を激しく揺さぶった。まさに衝撃的な出会いだった。前田美波里を起用したキャンペーンは翌年も続き、成瀬は制作者の名を心に刻む。

美大3年生になった年、卒業したらあの人のもとで仕事を学びたいという一心で連絡をとった。アートディレクターの名は石岡瑛子。1980年代以降はニューヨークに拠点を移し、映画、演劇、オペラなどの仕事でグラミー賞、アカデミー賞、カンヌ国際映画祭芸術貢献賞など数多くの賞を授賞していくが、当時は資生堂宣伝部を辞め、自らのオフィスを準備している時期だった。「初めてご自宅に電話したとき、瑛子さんのお母様が『成瀬さん電話の感じがとてもよかった』と言ってくださったから会えたのよ」と成瀬は笑いながら語る。

やがて石岡の仕事を手伝うようになり、1970年美大卒業とともに石岡デザイン室に入所する。

やがて石岡の仕事を手伝うようになり、1970年美大卒業とともに石岡デザイン室に入所する。「私が入ったとき、角川文庫とパルコの仕事が始まりました。どちらも驚きと歓びをビジュアルに託し、人間の生き方を問う、日本で最初のメッセージ広告だったと思います」成瀬がこう語るように、その仕事は時代を変えるほどの強いインパクトを社会に与えた。角川文庫では、文学青年が家で読むのではなく、旅に出る男が持つ一冊として訴求するため、灼熱のサハラ砂漠で撮影。パルコの広告では、女優フェイ・ダナウェイに三宅一生の服を着せ、「西洋は東洋を着こなせるか」と世の中に問いかけた。

ジャンルを決めることなく、果敢に未来へ向かっていく師と共に過ごした濃密な時間は、成瀬にとってかけがえのない宝物だ。

広告の仕事を支えるデザイナーには、体力と忍耐力、そして心身の運動神経が要求される。夜な夜なプロジェクターでポスターサイズに映出された大量の写真の中から、たった1枚の写真を選ぶ。石岡はその写真の多さを“馬に食わせるほど”だといつも笑ったという。メッセージ力を高めるために石岡がこだわった手書きと手張りの文字にも気が遠くなるほどの時間がかかった。「入社2年目くらいから、やめたいやめたいって言ってたんですよ。マッチ箱でもいいから、自分に頼まれ、最初から最後までやりたいって」。しかし石岡は「今やめたら、マッチ箱しかできない人になっちゃうわよ」そう返したという。成瀬は無我夢中でメッセージに息を吹き込み続けた。

石岡の仕事は映像、舞台美術、エディトリアルへとボーダレスに広がっていくが、「白いキャンバスを前にして、描くべき何かを持っているほど、幸せなことはない」という彼女の言葉を今もはっきりと覚えているという。ジャンルを決めることなく、果敢に未来へ向かっていく師と共に過ごした濃密な時間は、成瀬にとってかけがえのない宝物だ。

オーガニック・モダン 有機的であること

「命を吹き込む仕事に必要なものは、手の力。

石岡デザイン室に入所し10年。1980年に成瀬は独り立ちする。最初の仕事はISSEY MIYAKEのブランドのひとつ、プランテーションだった。ワンマイル・ウェアという家のそばで楽に着られる天然繊維の衣服で、彼女は約10年このブランドに関わっていく。「多くの方々の力を借りながら、一生さんの衣服の原点に触れ、厳しくもやりがいのある仕事でした」こう語る彼女は広告・ブランディング・エディトリアルと幅広く仕事をしていく中で自分自身のデザイン・コンセプトを確立する。

有機的であること=オーガニック・モダン。ただ自然を取り入れたり、かたどったりするだけではなく、制作物自身が命を宿し、呼吸するようなデザインをめざす。ショッピングバッグひとつでも、生き生きしている、かわいい、欲しいと思わせるライブ感覚が息づくデザインがテーマだ。成瀬の代表的な仕事のひとつ、本の装丁を例に彼女はこう語る。「命を吹き込む仕事に必要なものは、手の力。紙、文字、印刷が織りなすマス・プロダクションの中に、手の仕事を盛り込みます。生産性は落ちますし、本の価格は上がりますが、読み手との親密な関係を生み、命の永いものになります」。

「ヴィオネ」ベティ・カーク著

「ヴィオネ」ベティ・カーク著 東海晴美編 求龍堂刊。1993年原口理恵基金ミモザ賞受賞。 20世紀の衣服の源流、マドレーヌ・ヴィオネ(1876~1975)の伝記・作品集。 製版・印刷・製本は小嶋茂子、熊倉桂三ら(凸版印刷)、日本のクラフトマンシップの賜物。

「スキャパレッリ」パルマー・ホワイト著

「スキャパレッリ」パルマー・ホワイト著 久保木泰夫編 PARCO出版刊。1994年ADC賞受賞。 パリ・モードの女帝、エルザ・スキャパレッリ(1890~1973)の伝記・作品集。 製版・印刷・製本は「ヴィオネ」と同じチーム。

「ジョージア・オキーフ」ローリー・ライル著

「ジョージア・オキーフ」ローリー・ライル著 道下匡子訳 PARCO出版刊。 アメリカ現代絵画のパイオニア、ジョージア・オキーフ(1887~1986)の伝記。 日本で最も美しく読ませる活字組版、秀英体明朝(大日本印刷)。オリジナル製本、蛇腹カバー。

漆器のアヴァンギャルド

このUTSUWAコレクションは、「最新の科学と人間の技が手を組んで生まれた和風アヴァンギャルド」とメディアで評された。

成瀬の仕事に企業ブランディングの根幹を築くロゴ・デザインがある。ISSEY MIYAKEのプランテーション、キリンビバレッジ、紀尾井ホール、よみうりランドEASTなど、日常生活の中で多くの人がそのデザインを親密で印象的な存在として記憶しているだろう。1987年、彼女はジュエリーの仕事を受け、そのブランド・デザインを思考していく中、バッケージを漆にすることを思いつく。数十万円もするジュエリーを包むのに、紙箱では物足りないと感じたのだ。

漆の専門家を探し続けたある日、アヴィ社・森下正紀に出会った。彼は従来のプロダクトデザインとはまったく異なる発想をする成瀬の仕事に共鳴し、自身の会社の漆器コレクションのデザインを依頼する。その内容は、螺鈿や沈金など、加飾という伝統工芸の技に頼るのではなく、塗料としての漆の力を器に表現してほしいというものだった。

自らの手と眼で舐めるように描いた実寸のドローイングと、塊を彫り出すようにつくった実寸の図面を数値解析し、コンピュータ・プログラミングによって特製の刃で彫り上げる手法を森下と開発した。

漆は東アジアに棲息するウルシ科の木の樹液で、接着剤、装飾のための塗料として縄文時代から活用されていたが、日本人は塗り研ぎを数十回と繰り返す工程で生まれるその光沢に美を見いだし、独特の漆器を創り上げた。漆器の木工は轆轤と旋盤によるものがほとんどだったが、成瀬はスタッフと共に自らの手と眼で舐めるように描いた実寸のドローイングと、塊を彫り出すようにつくった実寸の図面を数値解析し、コンピュータ・プログラミングによって特製の刃で彫り上げる手法を森下と開発した。

「私は漆の本質に生命感を見ました。漆は光をその表面で反射するのではなく、一度その層に吸い込み、ある重量と温度を持って還してくるように感じます」木曽の塗り師・武藤勇によって仕上げられたこのUTSUWAコレクションは、「最新の科学と人間の技が手を組んで生まれた和風アヴァンギャルド」とメディアで評された。

朱漆の重箱

朱漆の重箱

価格 お問い合わせ下さい。
本体サイズ 26W x 27.5D x 25.5H cm
重量 約3.4kg
素地 M.D.F.
塗り 漆 呂色・乾漆塗り仕上げ
エディション オリジナル

1987年制作の作品です。専用桐箱付き、サインは桐箱蓋裏にあります。

作品ご購入の流れ

①お問い合わせ

まずはお気軽にお問い合わせください。ご興味のある作家、ご希望の作品についてご連絡ください。サイト上に掲載されているもの以外にも様々な作品をご案内可能です。

②ご購入可能な作品のご案内

お問い合わせ内容をもとに、担当者よりご連絡させていただきます。細かいやりとりはお電話でもご対応させていただきます。

③お見積り・納期目安・購入規約書の確認

ご希望の作品のお見積り、納期目安、購入規約書をご連絡いたします。尚、納期につきましてはあくまでも目安となり、納品日を保証するものではございません。また送料に関しましては、全額負担になりますので、あらかじめご了承ください。

④ご注文の意思確認

お見積り、納期目安にご納得頂けましたら、購入規約書にサインをお願いいたします。

お問い合わせから意思確認までの流れ
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⑤決済についてご案内

購入規約書にサインをいただき、ご注文の意思確認が取れましたら、決済についてご案内いたします。費用は全額前金にてお願いさせていただいております。

⑥ご注文確定

ご入金が確認できましたら、正式にご注文確定として在庫を確保させていただきます。

⑦お引き渡し

美術品として郵送、直接お伺いして手渡しの両方に対応しております。事前にご希望をお知らせください。送料や移動費等はお客様負担でお願いさせていただいております。

お支払いからお引渡しまでの流れ
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よくあるご質問

お問い合わせについて

お問い合わせへのご返信
お問い合わせへのご返信は、通常2日~3日以内にお送りいたします。2日~3日経っても返信メールが届かない場合は、何らかの問題が発生している可能性が考えられますので、お手数ですが再度お問い合わせフォームよりご連絡ください。尚、土日祝日や年末年始などはご返信までにお時間をいただく場合がございます。あらかじめご了承ください。
お問い合わせの対応言語
お問い合わせの対応言語は日本語、英語のみとなります。
お電話でのお問い合わせ
お電話でのお問い合わせも受け付けておりますが、まずはお問い合わせフォームよりご連絡ください。

作品のご購入について

ご注文確定までの流れ
まずはお問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。ご不明な点はこの段階でご質問いただき、担当者より在庫状況を含めて回答させていただきます。ご注文の意思確認が取れましたら、決済についてご案内いたします。費用は全額前金にてお願いさせていただいております。お客様からのご入金が確認できましたら、正式にご注文確定とさせていただきます。
作品のお引き渡し方法
美術品として郵送、直接お伺いして手渡しの両方に対応しております。事前にご希望をお知らせください。尚、送料や直接お伺いする際の交通費、宿泊費等はお客様負担でお願いさせていただいております。あらかじめご了承ください。
作品のご見学
ご注文確定前に、実際に作品をご覧いただくことは可能です。ただし、時期によってはお受けできない場合もございますので、まずはやり取りをさせていただいている担当者にご相談ください。
作品の保証
ご注文確定以降に当方の都合により納品不可能となった場合、全額返金いたします。
ご注文後のキャンセル
ご注文確定後のキャンセルはお受けする事ができません。あらかじめご了承ください。
納品後のメンテナンス依頼
お問い合わせフォームより一度ご連絡ください。クリーニングや塗り直しなどが必要な場合は別途費用が発生いたします。
作品の梱包
桐箱に薄葉紙、緩衝材にて作品を保護し、段ボールの外箱に入れ納品いたします。尚、梱包には別途費用が発生いたします。

作品についての注意事項

漆器作品の特性
漆は、急激な温度変化や激しい乾燥や湿気、強い衝撃には弱い性質があります。
・直火、電子レンジ、オーブン等でのご使用はしないでください。
・高温すぎるものを近づけたり、触れさせると漆の色が変色してしまうことがあります。
・長期間にわたり低温度な場所での保管やご使用をされると作品が変形をする場合があります。
・作品を水につけたまま、あるいは水分の多い場所に長い間放置しないでください。
取り扱いの注意点
・よい艶を永く保つには、いきなり強く拭かず柔らかい布で塵をはらい落としてから拭くようにしてください。
・洗う際はぬるま湯で台所用中性洗剤を薄めて使い、作品を傷つけないやわらかい綿布をご使用ください。
・水に長時間つけておくことは避けてください。
・作品についた水分を拭き取る際はやわらかい綿布巾で行ってください。
・絹布や化学ぞうきんは使用しないでください。傷や変色の原因になる場合があります。
・油分の強い食品は敷き紙などを使用ください。
・食器洗浄機、乾燥機の使用は避けてください。
・外光の入る部屋での長期間の展示や保管は禁物です。紫外線が作品の塗膜に影響を及ぼします。直射は厳禁です。
・漆作品は極端な乾燥により変形しますので、環境に合わせて水の入ったコップなどを置き、乾燥を防いでください。
・冷暖房器具のそばに置かないようにしてください。
・衝撃を与えないようにしてください。

国外対応について

国外からのご注文
国外からのご注文も受け付けております。お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。尚、対応言語は日本語、英語のみとさせていただいております。あらかじめご了承ください。
輸出入手続き
作品の輸出手続きは当方にて行わせていただきますが、輸入手続きにつきましてはお客様ご自身にて行っていただきますようお願いいたします。尚、双方が正常に手続きを完了していても、何らかの理由により税関で作品の受け入れを拒否されてしまう場合がございます。その場合に生じた損害に関しては、当方は一切の責任を負いかねます。あらかじめご了承ください。
お引き渡し方法
美術品として郵送、直接お伺いして手渡しの両方に対応しております。事前にご希望をお知らせください。尚、送料や直接お伺いする際の交通費、宿泊費等はお客様負担でお願いさせていただいております。あらかじめご了承ください。