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木工藝家 須田賢司 Vol.1 清雅を標に

 
須田賢司
Kenji Suda
 

1954年東京生まれ。木工藝家の父・須田桑翠のもとで木工をはじめ、1973年日本伝統工芸展に初入選。1979年日本工芸会正会員。1992年群馬県甘楽町に工房を移転。2006年楓拭漆箱「皓月千里」で日本伝統工芸展朝日新聞社賞。2008年楓拭漆小箪笥「陸離」で同展日本工芸会保持者賞(宮内庁買上作品)。同年日本工芸会理事。東京芸大非常勤講師。2010年紫綬褒章受章。2014年に重要無形文化財「木工藝」保持者(人間国宝)に認定。ニュージーランドやスウェデーン、デンマークでのワークショップ等、海外文化交流にも力を注ぐ。

家の記憶 父の手の技

板や棒状に整えた木材を組み合わせて小箱や家具などの調度品を作る技法を指物という。

板や棒状に整えた木材を組み合わせて小箱や家具などの調度品を作る技法を指物という。木の乾燥具合を知り、10ミクロンの厚さの違いを見分け、仕上がりを確かめ、精緻に作り上げていく木工藝の技の集大成。祖父・桑月、父・桑翠と約110年続く木工家の系譜に生まれた須田は、3代目にして重要無形文化財「木工藝」保持者(人間国宝)として認定された。2014年、60歳のときのことだ。

祖父から父へ、そして須田へ。その三代の歩みは、日本の工藝が実用品の世界から、表現としての工藝へと変化していく歩みと重複している。

「木工藝を生業とする家に生まれた私にとって、家の風景といえば父・桑翠が仕事場にいる姿。木を削る骨太の指の動きを今でも覚えています」。こう語る須田はごく自然にこの道に入った。父から「跡を継げ」と言われた記憶はないという。それに反し、父は指物師の長男としてこの道を継いだ。もともと学究肌だったこともあり、職人に甘んじることなく木工藝家の道を選び、正倉院以来、連綿と続く正統の木工藝を須田に伝えた。祖父から父へ、そして須田へ。その三代の歩みは、日本の工藝が実用品の世界から、表現としての工藝へと変化していく歩みと重複している。日本の伝統工藝、木工藝について須田が何を思い、どう考えているのか。その家系を紐解きながら紹介していきたい。

須田の祖父・桑月は、明治10年、岐阜県関市に生まれた。子供のときから手先が器用なこともあり、中世から続く大工の親方のもとで宮大工として出発した。

須田の祖父・桑月は、明治10年、岐阜県関市に生まれた。子供のときから手先が器用なこともあり、中世から続く番匠の系譜にある大工の親方のもとで宮大工として出発した。やがて住まい近くの新長谷寺にある重要文化財の厨子の修理を手伝う機会を得て、その見事な細工に深く感銘し上京。美術指物師として活躍していた前田桑明の門を叩く。そのとき、桑月は30歳。弟子入りするには遅すぎる年齢だったが、宮大工として腕を磨いてきたこともあり、すぐに一番弟子として工房をまかされたという。

祖父が工房に入ったのは偶然かもしれません。でも、その結果、いまの私があるんです。

「祖父が工房に入ったのは偶然かもしれません。でも、その結果、いまの私があるんです。前田桑明は桑に明るいと書くように、桑の木、それも伊豆七島・御蔵島の島桑の美術的価値を見いだして調度品に用い、日本の木工藝の礎を築いた人物です」。こう須田が語るように、前田桑明は数多くの名品を生み出し、大正天皇と昭和天皇のご大典のときも島桑を用いた献上の品を制作している。

なぜ、それほど島桑で作った桑明の指物が高く評価されたのか。「それは当時、時代を牽引していた渋沢栄一などの財界人が蒔絵を施した華美で女性的な調度品よりも、一幅の絵のような美しさと力強さを持つ島桑の美質を好んだからでしょう」。須田が語るその世界は、指物から木工藝へ、日本の伝統工藝の精神を受け継ぎながら発展していく木工藝の歴史であり、先駆者たちの地道な精進の軌跡でもあった。

指物から日本の伝統工藝へ

実用の形をしているけれど、それを直接の目的にせず鑑賞に耐えうる美しい存在

「祖父・桑月から日本の正統的な木工技術を受け継いだ父・桑翠は、戦前パトロンともいえる好事家たちのために精緻な調度品を作っていたのですが、戦後、彼らは没落し、仕事は激減してしまいます。しかし、父は、職人として日々仕事をしながらも日本の伝統工藝の木工藝家としての道を歩み始めました」。

作家として生きる決意をした父のもとで育った須田は、木の端材をつなげて電車に見立てて遊んだり、工作機の下で眠ったり、木工藝を営む家の暮らしに育まれいつのまにか父以上に伝統工藝家としての生き方を身につけてしまったと笑う。木工藝という仕事を10代のときから父のもとで始め、40年以上続けている須田が日本の伝統工藝をどう捉えているのか尋ねてみた。すると、「実用の形をしているけれど、それを直接の目的にせず鑑賞に耐えうる美しい存在」という答えが返ってきた。

日常の道具にその機能以上の美を加え、価値を見いだして愛でる。それが日本の伝統工藝の本質なのだと思います。

「蒔絵の硯箱に今まで一度も使った形跡がないものがあります。つまり使うことはできる、けれど使わずに鑑賞し、愛でる。花瓶や壷などの陶器にしても花を生けたりせず、鑑賞することに重きを置く。もし、美術品の価値を追求するなら、花瓶や壷などの内部に空間を設けず一個の塊でいいはずです。それなのに内部をくり貫いて、重いとか、軽いとか、手にちょうどいいとか、一生懸命、考え、作り上げていく。そこが日本の伝統工藝の原点。それに対して西洋の絵画は額に入れることで、場所を問わず、100年でも200年でも飾っておけます。一方、掛軸の場合は飾る場所は床の間という非常に限られた空間で、来客や季節に合わせて掛け変えたりする。さらに屏風は国宝の燕子花図屏風など絵画に分類されていますが、本来は調度。たたんで、しまったりすることもある。つまり美術品であり、工芸品であり、家具でもあるわけです。日常の道具にその機能以上の美を加え、価値を見いだして愛でる。それが日本の伝統工藝というものの本質なのだと思います」。

手に入れた人が、ゆっくり掌の中で玩ぶもの、心を落ち着かせるもの。

今日、日本で伝統工芸というと、下駄、和帚、こけし、さらには民芸など昔から伝わっている手仕事で作る品々を含むことも多いが、須田は産業としての伝統工芸と自分たちが行っている表現のための仕事は区別している。木工藝は、日常で使うために作られたものではない。どこかに並べておくものでもない。手に入れた人が、ゆっくり掌の中で玩ぶもの、心を落ち着かせるもの。極めて個人的な悦楽のために作られたものだという。

濁に呑まれず 雅を生きる

自らの仕事のランドマークとしている「清雅」の二文字については、季節毎に軸を替え花を生け、茶を嗜む父の後ろ姿から受け継いだものが大きいという。

「祖父が集めていた道具は関東大震災で、父が集めていた道具は東京大空襲で焼けてしまいました。古くていい道具は実のところあまり残っていないんですよ」と須田は語るが、自らの仕事のランドマークとしている「清雅」の二文字については、季節毎に軸を替え花を生け、茶を嗜む父の後ろ姿から受け継いだものが大きいという。生活の安定を顧みない木工藝一筋の生涯であったが、「濁」に呑まれることなく、「雅味」のある生き方とその反映としての作品は、須田の創作活動の礎になっているという。

「清雅」という言葉を海外に伝える際、日本在住の翻訳家Gavin Frew/ギャビン・フルー氏は「Pure and Refined Elegance」と訳した。

「清雅」という言葉を海外に伝える際、日本在住の翻訳家Gavin Frew/ギャビン・フルー氏は「Pure and Refined Elegance」と訳した。「清」は混じりけのない、清らかな状態。「雅」は「みやび」というより、雅趣、雅味などの「ガ」。骨格のしっかりした芯のある、男性的なエレガントさをめざす須田の伝統工藝に対する姿勢がその英訳に込められている。「海外で木工藝が紹介されるとき、実用的な技術という意味合いが強いクラフトと訳されるのですが、私の木工藝観に照らすとどうもしっくりこなくて」。そう語る須田にとって、この英文のニュアンスは自身の姿勢を明確に代弁する言葉になっているのだろう。

二都物語

二都物語

価格 お問い合わせ下さい。
本体サイズ 9W x 27.5D x 12.5H cm ×2
素地 木材(シカモア・メープル、白蝶貝、パウアシェル、等)
塗り 漆、他

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お見積り、納期目安にご納得頂けましたら、購入規約書にサインをお願いいたします。

お問い合わせから意思確認までの流れ
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購入規約書にサインをいただき、ご注文の意思確認が取れましたら、決済についてご案内いたします。費用は全額前金にてお願いさせていただいております。

⑥ご注文確定

ご入金が確認できましたら、正式にご注文確定として在庫を確保させていただきます。

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作品についての注意事項

作品の特性
木工藝作品は繊細な美術工芸品です。他の美術作品以上に環境の変化にご注意いただき、作品に使用されている素材の性質を十分ご理解の上、丁寧にお取り扱いください。また、漆は急激な温度変化や激しい乾燥や湿気、強い衝撃には弱い性質があります。
・高温すぎるものを近づけたり、触れさせると漆の色が変色してしまうことがあります。
・長期間にわたり低温度な場所での保管やご使用をされると作品が変形をする場合があります。
取り扱いの注意点
・よい艶を永く保つには、いきなり強く拭かず柔らかい布で塵をはらい落としてから拭くようにしてください。
・絹布や化学ぞうきんは使用しないでください。傷や変色の原因になる場合があります。
・外光の入る部屋での長期間の展示や保管は禁物です。紫外線が作品の塗膜に影響を及ぼします。直射は厳禁です。
・作品は極端な乾燥により変形しますので、環境に合わせて水の入ったコップなどを置き、乾燥を防いでください。
・冷暖房器具のそばに置かないようにしてください。
・衝撃を与えないようにしてください。

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お引き渡し方法
美術品として郵送、直接お伺いして手渡しの両方に対応しております。事前にご希望をお知らせください。尚、送料や直接お伺いする際の交通費、宿泊費等はお客様負担でお願いさせていただいております。あらかじめご了承ください。